こいつは死ぬタイプだな。お気の毒。とか。
 鼻で笑っている状態じゃなくなったのは、男がまたおれにしがみついてきたからだ。
「おいぃぃ……」
 声に力がないのは、しかたない。
 もう、いちいち反応する気力エンプティー。
 おまけに、今度は両手でおれの右腕にしがみついてきた男は、そうされてみると、あまり身長が変わらないせいで、おれの頬を盛大に髪でこすってくる。
 へー。
 こいつ、見た目しゃれおつ男子なのに髪のセットには無関心派? などと。
 かすかに匂うシャンプーの残り香に自分でも場ちがいな気がする感想。
 笑いかけたとき静かにドアが開いて。
「あ!」
 当然な驚きをひと言で表明した〈こんなかわえぇ娘、うちの学校のどこに生息しとったんじゃああああ〉ほどマイフェイバリットな女子と、おれは見つめあっていた。

 くるんとまつ毛がカールした大きな目が、まばたきだけで殺人光線を放つ。
 ぷっくらした頬を囲むシャギーの入ったショートヘアも真っ黒でおれ好み。
 背は女子としては高からず低からず。
 抱きしめれば、おれの胸にぴったりと頬がつきそうなジャストサイズ!
「キャッ」
 ものの3秒で我に返っちまった娘は、律義に閉まり始めるドアを伸ばした腕で止めて。
 おれに「くふっ」と、目もくらむかわいさで笑いかけてから、おれの腕にしがみついている男の身体を、上から下にゆっくりと――見た。