2『He is 異世界人(エイリアン)

 まさか、この学校には、こういう異世界人が集う、おれの知らない地下室が?  ――なんていうはずもなく。
 おれは、わけのわからない異世界人に捕獲されたまま、今度こそ1階のロケーションを見せたエレベーターのドアが、誰も降ろさず誰も乗せず、ただ静かに開いて静かに閉まる様子をぼう然と見た。

「おいっ!」
「――――あ?」
 まぬけな声を出した男が、ぽかんと口をあけて、自分の両手がつかんでいるものを見る。
 そう。おれの腕だ。
 情けないことに、ぴくとも動かない、お・れ・の・腕。
「離せ、こら。マジ痛ェ」
「や……」
 跳びすさったヤツの身体のどこかが昇降ボタンを押したらしい。
 エレベーターが静かに上昇しだして。
 おれはまた見知らぬ男と見つめあっていた。
 いや、はっきり言って、おれのほうは今度はガンくれ状態だけど。
「ご…、ごめんなさ」
 そこで息を飲んだ男が、2階に止まって静かに開くドアの前で、ぺしゃんと床に腰を落とした。
 顔はもう真っ白だ。
「おい?」
「ひっ!」
 ひとの呼びかけに、失礼にも小さな悲鳴を上げた男は、そのまま頭を抱えてうずくまる。
 あぜんとその様子を見ていたおれは、またしても不毛にドアが閉まるのを視界のすみで見て、なぜだか泣きたいくらいうれしかった。