衝撃…その言葉が頭の中を占めた。
サオリさんが女の目で誠人を見てるのは気づいてた。
サオリさんに付き纏われてて困ってるものだとばかり思ってた。
でも違ったんだ。
誠人は一度、それは襲われたものだけどサオリさんと体を重ねた。
誠人はもう二度と…そんなことを起こさせないように、起こらないようにと1週間ごとに彼女を変えて家に連れ込でいた。
それはサオリさんに、誠人は遊び人というレッテルを貼るために。
誠人を見ると、彼は下を向いていて太股の上に乗せられた手は微かに震えていた。
私は、どうすれば…。
私が出来ることは何。
私が掛けてあげる言葉は?
今の彼に何をどう言ってあげればいいの。
いくつか考えたけど、どれも正解とは言えず私は誠人を抱きしめた。
その瞬間震えた彼だけど、私の背中にそっと手を回して強く抱きしめ返した。
もうその手は震えてなんかいなくて、私はようやく「もう大丈夫だから」と言葉を発することができた。
「ありがとな」
『ん。どういたしまして』
「何か分かんねぇけど、今すげぇ落ち着いてる」
沙夜パワーすげぇなと言った誠人に笑って「よかった」と返した。
誠人の精神も安定していてもう取り乱すことはなさそう。
『じゃあ行こっか』
体を離してそう言い、立ち上がった私を見た誠人は「沙夜先輩は…苦しくないのか?」と訊いてきた。
苦しい?苦しいに決まってるよ。
この苦しみから_______アイツから開放されたい。
だけど私はその術を知らない。
『ごめん。私はまだ覚悟できない』
今の私に話せる覚悟はない。
「そうか」
『…うん』
「じゃあスッキリしたかったり話したくなったら話せばいい」
『……』
「そしたら俺が助けてやる」
私はその言葉に思わず手を伸ばしそうになって慌てて引っ込めた。
言葉は嬉しいよ…けど助けるってどうやって?
こんなにも広がってしまった噂をどう訂正してくれるの?
今にも泣いて喚きながら言いそうになった言葉を、思いっきり飲み込んでもく深くにしまい込んだ。
___公園を出てバイクで家まで送ってもらうと、私達はエントランスで別れた。