「私ね、誠人くんのことずっと男として見てたのよ?」
「知ら、ねぇよっ…」
知らねぇ、アンタの気持ちなんてこれっぽっりも知りたくなんけもねぇよ。
「そう。貴方は気づいてくれなかったもの」
「アンタ、結婚して子供も…いんだろッ」
「えぇ、でも関係ないわ」
「クソ女ッ!」
思っていたことを口に出すと女は一瞬傷ついたような表情をした、けどすぐに元に戻った。
「酷い言い方、でも仕方ないわね。それにカスミさんはあと2時間ほど戻ってこないわ。お父さんもお兄さんも」
本当、なんでこんなときに限って皆帰ってくんの遅ぇんだよ。
俺は帰ってこない家族に毒を吐いた。
マジで体動けよッ。
このままこの女に、なんて御免なんだよ!
「抵抗しても無駄よ。その為にコーラに混ぜて飲ませたんだから」
気味悪く笑う女の顔は、やっぱり気持ち悪くて吐き気の波が押し寄せてきた。
けど、それを堪えて馬乗りになって頬を赤く染めている女を睨む。
だけど女は睨む俺を見て更に興奮を覚えたのか、息を乱し始めた。
「誠人くん」
欲の目が俺を捕らえる。
「いい子だから」
赤い唇が震えて動く。
「大人しくしてね」
少し乱れる息、その先をいきたい女の声が部屋に響く。
キスをしようとした女の唇を拒むと、女は頬を両手で掴んできてガッチリ固め、無理矢理唇を押し付けてきた。
荒々しくキスをしてくると唇は首、鎖骨、胸へと下りてきてワザとらしく音を出す。
そこから先は思い出すのもおぞましい程の行為。
全て終えたあと、腹の辺りからフツフツと喉元まできたものを近くに置いてあったゴミ箱に吐き出した。
直後に我慢できずに嘔吐した俺を見た女は顔を赤くして「最低ッ!!」と悲鳴のように叫ぶとベッドの下に散らばった下着や服をかき集めて身にまとい、ドアが壊れるんじゃないかってほど強く開けると一度俺を睨んで出て行った。
俺を最低扱いかよ?
…ハッ、どっちが最低だっての。
「くそッ…」
死ぬほど最悪だ。
生まれて初めて…
「女に…っ、ちくしょう」
俺の今にも死にそうで消えそうな声は虚しく部屋に響いた。



