【北条 誠人side】
「気づいてるかもしんねぇけど、俺がこうなったのはサオリさんのせいなんだよ」
そうだ、あれは去年…中学3年生のときに起こった。
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「…ッてぇ」
地面に倒れる3人の男もうちの1人が腹の痛みをうったえている。
痛いのは当然だ、俺が殴ったからな。
俺のこの拳だって痛ぇんだよ。
1人だけ意識のあるその男を見下ろしながら「で、弱いのはどっちだ?」と言葉を吐いた。
赤みがかった髪に右に3つ左に2つのピアス、制服である学ランは見事に着崩されて、上はパーカーともはや制服とは言いがたい。
そんな俺はどこからどう見ても不良でしかなく、中学1年の頃から喧嘩三昧の日々だった。
自分から売ることはしねぇけど、売られる日々で売られたら買っちまうのが俺の性格だ。
今日も売られた喧嘩を買い、もちろん負けることなんてなく少し怪我はしたけど大した怪我じゃないし、むしろ相手が重症で相手のほうが治療が必要なくらいだ。
2つ上の奴らだったけど大して強くもなくあっさりと倒した。
地面に這い蹲る男たちにもう一度視線を寄こすと鼻で笑ってその場を後にした。
「……ただいま」
その足で家に帰ると兄貴もおらず、親父もまだ帰ってきてねぇようだし、お袋も居ない様子だった。
そして代わりにいたのは…
「あら、おかえり誠人くん」
お袋と仲が良く隣に住んでる女サオリさん。
俺はハッキリ言ってこの女が苦手で、今2人きりということも苦痛でしかない。
時刻は6時を指している。
この女は自分の家族の夕飯は作らねぇのか?
早くこの家から出て行けよ。
そして二度と来んじゃねぇ。
女の言葉を無視して横を通り過ぎリビングへ入ると、女も着いてきてさっきまで座っていたであろうイスへと腰を下ろした。
「9時過ぎくらいには戻るって言ってたわ」
9時すぎ…遅ぇ。
この女と3時間も一緒にいられねぇ、いたくねぇよ。
ソファに近づきテレビでも見ようかと腰を下ろしたら女がコーラの入ったコップを差し出してきた。



