落ちないようにと、逞しいその腰にしっかりと腕を巻きつける。
風が気持ちいい…少し冷たいかな?
私の髪をなびかせる風は秋が来ることを知らせている。
バイクか…人の後ろに乗ったのは本当久しぶりだなぁ。
最後に乗ったのは2年前、か。
バイクを見るたびにアイツを、あの男を思い出してしまっていたから。
でも乗ってしまえばなんてことなくて。
あの時のことを思い出すよりも、この快感の方が大きくて。
やっぱりバイクっていいな。
「なぁ!」
『何ぃ!?』
周りの音が大きいので自然と声が大きくなる。
「少し、寄り道してもいいか?!」
寄り道か…まぁ少しくらいなら大丈夫かな。
『いいよ!』
そう返事をして誠人は私の家から近い公園に入りバイクを止めた。
「ん、降りて」
メットを外してバイクから降りると、直ぐ近くにあったベンチに腰を下ろした。
「話したい」
その一言で誠人は過去のことを言っているんだと分かった。
『私に話していいの?』
「あぁ」
『話せるの?』
「…あぁ」
少しだけ間があったものの、誠人の目は真剣そのものだった。
「沙夜先輩…沙夜になら、話してもいい」
『いいの?バラしたりするかも』
「アンタはんなことしねぇ」
『何を根拠に』
「沙夜は俺と似てる気がするから」
私と似てるか…。
私もその気はしていた、けど彼にそれを話そうか?なんてことは一切思ってなくて…彼も同じだと思っていた、なのに彼は話すと言うのね。
『いいよ。聞いてあげる』
私はしっかりと誠人の目を見てそう言った。



