「ん、美味しい」
『当たり前』
自分で作ったシチューをパクパクと食すと空になり、皿をシンクへと持っていく。
「沙夜学校どう…?」
『いつも通り』
お母さんはほぼ毎日こう聞く。
これが彼女が娘とコミニュケーションを取る方法。
けどお母さんはワザと深くは訊いてこない。
私が話してくれるのをきっと待ってるんだと思う。
「彼氏は?いるの?」
けど今日は違うらしい。
いつもならこんなこと聞こうとしないのに。
どう答える?
いる?いない?それとも別の答え?
『気になる人は、いるよ』
私の口から歯切れ悪くそう放たれた言葉。
その言葉は呆気なく空気中へと消えた。
そう答えてお母さんの口から言葉が帰ってくる前に背を向けた。
これでいいんだよ。