「建築士になるらしいっス」
「へぇ~正一さんと同じ職につくのか。いいんじゃね」
そんな彼らを他所にまだまだ話し合いが終わらない私と誠人はというと。
「沙夜先輩」
『あ、久志…くん』
誠人と付き合う前に付き合った久志君が現れ、妙な空気が漂っていた。
『久しぶり、だね』
校舎が違うもんだから彼とは全然会わなかった。
見かけることはあったけど声は掛けなかったし。
「先輩卒業おめでとうございます」
『うん。ありがとう』
「先輩、俺っ…あの」
「なぁ」
彼が何かを伝えようとしているのにそれを遮った誠人。
「お前2組の松本久志だよな?」
俺が沙夜と付き合う前に付き合ってた奴だろ?と付け足した誠人。
驚いた、そんなこと知ってたんだ。
ていうか…目が嫉妬の渦。黒い黒いぞ。
「沙夜に余計なこと言おうとするな」
そして次の瞬間、私は目を開いたまま固まった。
『んっ…!!』
「これ、俺のだから」
久志君の…沢山の人がいる前でキスをしてニヒルに笑いそう言った。
「行くぞ」と言うと、何事もなかったかのように私の腰に腕を回してスタスタ歩き出した。
しかも人が左右に避けていき、自然と道ができてしまうというVIP待遇。
私はと言うと突然のキスにビックリして、唖然とし固まってしまっていた。
「沙夜?」
名前を呼ばれハッとして我に返ると、誠人を睨みつけるが私の睨みなんてこれぽっちも効かないと知っている。
だから、
『1週間キス禁止!!』
1週間限定のキス禁止令を下した。