「好きじゃねーだろ。全然足りねぇ」

『何、それ。ちょー我儘』

「ククッ…」

『何笑って___』

「愛してる」

『ななっ、人がいる前で何言って…!』




赤くなってテンパる私を見てハハッと笑う誠人、結果オーライと安心しきったような顔のリンさん、やっとかと言いたげな顔のヨウスケさん、「はい!おめでと~沙夜さん!」とチャラ目に登場したユウく___んッ!?ユウくん!?



『ちょっ、なんでユウくんまでここに!?』

「あ、俺?俺もチームに入ったんだよね」

『はい!?』



俺もチームに入ったって何!!?


「俺、副総長だからよろしく~」


こちらこそヨロシク~ってできるかァァッ!!



『なんでアンタまでっ…』

「ところでさぁ」




呑気なユウくんに「何!!」とキレ気味で言えば「下の奴等待ってるよ?いつまでイチャついてるき?」と下を指差した。


そこには、気まずそうな顔をして私たちを待っていた兵隊さんたちと呆れ顔のユカ。


呆れる…というか放置プレイされて若干お怒り?



『えっと…ねぇ、これどうすればいいの』



困った顔をしているであろうその顔で誠人に問うと、とりあえず挨拶しておけば?と軽く返された。


とりあえず挨拶って、無茶なことを言う…。



『あー…っと、ご存知の方もいるかもですが相楽沙夜です。あの、誠人がいつもお世話になってます』



「いえいえいえ」とハモった彼らにフフッと笑みが零れた。



『こんな私だけど宜しくお願いします。護るっていうより見守ってください』

「「「おうッ!!!」」」



少なからず私を受け入れてくれた彼らに、沢山ありがとうと言いたい。



「じゃあお待ちかねの暴走といくかァッ!!」



大きな声で呼びかけたリンさんに全員が反応した。


今日はリンさんとヨウスケさんの引退式と新総長の就任式らしい。


同時に行うのあまりないらしいんだけど…これって絶対私のせいだよねって思った。



だけど皆はあまり気にしていないみたいで、次々自分のバイクに跨っていく。


リンさんもヨウスケさんもユウくんも誠人も、大きなバイクに乗ると一斉にバイクを吹かした。



皆特攻服だし、その姿や爆音にも圧倒されて私はすでにこのチームの虜なになっていた。



「お2人はこちらです」とここに来るとき黒塗りの車を運転していた男性は、近づいてそう言うと私たちに用意されたのはさっきも乗った車だった。



バイクに乗ることができない私とユカがそれに乗るのは当然で、車に乗り込むと引退式の主役であるリンさんが吹かし、手を上げ前に振りかざしたときバイクが一斉に走り出した。





「超絶ヤバい」





隣に座るユカがそう口から零すとそれに便乗して私の口からも「本当凄い」と零れた。



誠人はこれからこの人数の頭を張るんだ。


そして私もこの景色を何度も目にすることになるんだと思った。



走り出せば今まで見てきた景色がガラリと変わった。




耳をつんざくような爆音。

道を、街を照らす沢山のライト。

猛スピードで走り抜け赤い線が残るテールランプ。

野次の歓声。

沢山の黄色い声。






全てが初めてだった。

今まで見たことのない世界がここにある。

これから見ることになる世界がここにある。

私はただ、魅了されていた。

一言も、一音も発さずに外の景色に酔いしれていた。






誠人と別れ、再び止まってしまっていた時間が____また音をたてて動き出した。


私達の歯車はまだ、動き始めたばかり。