フロアにいる彼らの歓声がさらに実感を持たせる。
“力を持たせてやる”
リンさんがあの時言ってた言葉はこういう意味だったんだ。
誠人はリンさんの隣に来ると、下にいる私をチラリと見て再び兵隊さんたちを見た。
「俺は頑なに族の世界に入ろうとしなかった。けど入ろうと思ったのは1人の女を護りたかったからだ。今まで“護る”と言って護りきれなかった。俺には力がなかった……だけどようやく守れる力を得た」
誠人…。
「護るもんもさらに増えたちまったけどな」
それはフロアにいる彼らのことだろう。
「俺はここに来てお前たちとつるんで、年下なのに認めてもらえて、慕ってもらえてすげぇ嬉しい。お前ら…」
一度喋るのを辞めた誠人は空気を吸った。
「俺の女を一緒に護ってくれッ!!」
そして兵隊の彼らに頭を下げた。
勢いよく頭を下げた誠人をカッコいいと思った。
「俺はお前らも全力で護る」
男でも惚れてしまいそうなくらいカッコいい誠人は、一回りも二回りも成長していた。
「沙夜」
彼が私の名前を紡いだ。
呼ばれる覚悟をしていなかった私は、名前を呼ばれてドキッと胸が熱くなった。
誠人と視線が絡み、“来い”と言ってるのが分かる。
足は…自然と彼の元へと動いた。
一歩一歩、彼に近づいていく。
2階に上がって誠人の前に立てば、誠人は王子のように膝を付いた。
「沙夜、待たせて悪いな。散々怖い思いさせた」
『……』
「だけどもう、そんな思いさせねぇ。逆に心配ばっかかけさせるかもだけど」
『誠人…』
「沙夜を護れる力をつけたぜ。なぁ沙夜」
『…何?』
「もう一度、俺と付き合ってください」
『っ、誠人…うぅっ…』
「泣いてちゃ分かんねぇよ」
そんなこと言われても…嬉しくて涙が止まんないっ。
沢山の人の前だというのに涙は流れ、嗚咽が出る。
彼の大きな手が優しく、流れる涙を拭ってくれる。
『…き、だよ』
「聞こえねぇ」
『~っ…好きだよっ、ば___わぁっ』
返事という名の告白をしたら、手を引かれて強く強く逞しくなったその腕に抱きしめられた。
この腕の中はすごく懐かしく感じて、また涙が零れた。