約束の1週間が経った。


会うのは17時らしく、いつものように学校に行き、リンさんの家にユカと帰ればリンさん達ははすでに帰っていた。



「おかえり~」と陽気に言ってくれたリンさんはじゃあ行こう!と、靴も脱いでおらず制服で玄関に突っ立ったままの私の手を引くと外に出た。




後ろを振り返ればユカは恥ずかしそうにヨウスケさんと手を繋いでる。



あら、これはもしかして?と思ってたけど本当はそんなこと訊く余裕も考える余裕なんかもなくてすぐにどこに行くの!?とチンプンカンプンな私はリンさんに連れて行かれるがままだった。



マンションを出ればいかにもな黒塗りの車が一台止まっているではないか。

もしかしなくても…。



「行くぞ」



この車に乗るわけで。

車に乗ったのは私とリンさんだけで、ユカとヨウスケさんはバイクでついてくるらしい。




「出せ」




あ、雰囲気変わった。

今のリンさんは魑櫻の総長の顔をしていて笑顔1つ見せやしない。



いつもの「沙夜ちゃーん」てテンションは一切ない。



車は発進すると何処かへと向かって行く。
一体どこへ向かっているというのか。


それが分かったのは見知った道、景色を見てからだった。



『倉庫…?』

「そうだ」



いや、リンさん“そうだ”じゃないでしょ。



『誠人がここにいるの?』



あまりの衝撃で敬語を使うことも忘れ訊いていた。



「今から分かる」

『今教えてよ』

「サプライズって大事だろ?」

『何よそれ…』



サプライズって言っちゃったら意味ないじゃん。


リンさんってちょっとおバカだよね。

疑問で不安を持ったまま倉庫の中に入れば、当然のようにあっちも不良こっちも不良。



リンさんはユカとここで待ってろと、沢山の不良から少し離れたところに椅子とテーブルを用意させて座らせた。



リンさんとヨウスケさんが2階の部屋に入っていくと、厳つい顔の兵隊さんたちが飲み物を持ってきてくれたり食べ物を持ってきてくれたりと気を使ってくれた。



『ありがとう、ございます…』



いい人たちばっかじゃん、見た目は怖いけど。


そんな人たちから貰った飲み物と食べ物に口をつけると、リンさんたちが入っていった2階の部屋の扉が開いた。



その瞬間シン…と静まり返ったフロア。



開かれた扉から現れたのは、特攻服というものに身を包んだリンさんとヨウスケさんで真っ黒な生地に金や銀、赤といった刺繍を入れていた。

凄い…と圧倒されたものの一瞬気になったのは特攻服を作るのにかかった費用だった。




「カッコいい…」




と、隣から心の呟き声が聞こえ目を向けると頬を赤く染めていたユカ。


視線の先には彼、ヨウスケさんがいた。




また彼もユカの視線に気づいたのかこちらを見て滅多に見せない微笑を見せてくれた。



そんなスマイルにユカはノックアウトのようだった。




「テメェ等!知っての通り俺は今日で引退だッ」




リンさんは喋り出したかと思ったらとんでもないことを口にした。


引退って…え、聞いてない。



知らなかったリンさんの引退。
なら次の頭を務めるのは一体誰なの?私はそれが気になった。



___胸騒ぎがする。




「それでだ。薄々気づいてただろうが、次の頭をハるのは北条誠人だ!!!」

『___え』

「「「オォォッッ!!!!」」」



私の小さな驚きは兵隊さんたちによってかき消された。


ううん、小さいなんてもんじゃない、心底驚いた…けどやっぱりって思う自分もいた。



『誠人が次の総長…』



口に出して言えばさらに実感する、彼が総長になるのだと。