【北条 誠人side】
「誠人さん喧嘩教えてつかぁさい!」
「あぁ。表出ろ」
またある時は。
「北条さんこのバイクどうしたらもっとイカしますかね?」
「こうすればイカすだろ」
「「「おぉ!!」」」
と歓声が上がる。
またある時は___てキリがない。
リンの奴に頼み込んで5日が経ったが、何故かすぐに受け入れられ、馴染んでしまい、そして頼られるようになっていた。
沙夜と別れて3日(俺は別れた気でいないけど)、リンに沙夜に会いたいと言ってくれねぇか?と頼んで返ってきたのは「1週間後」と、俺が考えていた以上に長い時間の待機命令。
それを聞いたときは重い溜め息を思わず吐いた。
「はぁ…疲れた」
いつもアイツらに喧嘩を教え、今日も喧嘩に付き合い、それが終わったため部屋に戻ればユウがソファーに座って悠々とバイクの雑誌を読んでいる。
この野郎…。
本当は怒鳴ってやりてぇところだけど、すぐに感情的になるのは俺の悪い癖でそこを直さなきゃいけねぇから我慢だ我慢。
「おぉ。キレねぇのな、偉い偉い」
にゃろぉ…俺がキレないよう我慢してるのをいいことにさらに煽ってきやがる。
さすが悪友と言ったところだな、本当煽るのがうめぇじゃねーか。
「テメェもアイツらの相手くらいしてやれよ。“ユウさんは来ないんすか?”て毎回聞かれる俺の身にもなれ」
「ふ~ん」
素っ気ない返事をしたユウはやけに嬉しそうだ。
殴ってやりてぇ。
「なら、そろそろ行ってやろーかな」
と腰を上げたユウは「行ってくるね~ん」といつものチャラさを出してアイツらのところへと行った。
ユウと入れ違いに誰かが部屋に入ってきて扉の方を見れば、リンがそこに立っていた。
昨日振りのその姿。
沙夜がコイツのとこに逃げたのが気に食わねぇ。
「手ぇ出してねぇだろうな?」
殺気を出して言えば「おぉ。上出来じゃねーか」と求めてない言葉が返ってきた。
「おい、リン」
「もうお前に任せても心配ねーな」
少し悲しそうに言うリンは本当にアイツらが好きらしい。
自分で言っておいて離れたくねぇとか、なんだよそれ。
「あ。手は出してねぇからな“まだ”」
「出したら殺すぞ」
「ハハッ。冗談冗談、出さねぇって」
信用できるか!
早く迎えに行かねぇと沙夜が危ねぇ。