2人をソファーに座らせて俺とヨウスケは向かい側に座ると、沙夜ちゃんは俺たちを見た。




「話せるか?」




と訊けばコクンと縦に首を振って口を開いた。




『誠人と別れたのは“同じこと”になりたくなかったから』




同じことって…今日のことか。




『あの女が言ったの“同じことになりたくないなら分かってるよね?”って』




あの女、そんなこと言ってたのかよ。
それでそんなことになったっつーのか。



『誠人のことが好きな人は未だにいる』



“今はまだ大人しいけど”と小さな声で付け足した沙夜ちゃん。

そういうことか…。




「次はそいつらが今回のことみたいにやってくんじゃねーかってことか」

『…うん』

「確かにやってくるかもな。だけど誠人には力がねぇ。今日だって俺たちの力がなかったら助けられなかったかもしれねぇ」




“助けられなかったかも”そう言ったとき、沙夜ちゃんの体が大きくビクついた。



するとユカちゃんが「リンさん」と俺を睨んできたが、悪いけどそれは本当のことだから言い換えるつもりはない。




「だから誠人は力をつけなきゃならねぇ。力を持たない事には何も始まらねぇし、次は護れねぇよ」




だからアイツには力を持てって前々から言ってきたのにな。



「どうしたら力を持てるか知ってるか?」



問いと同時に俺のケータイが音を鳴らして震えた。



「悪い」と断りを入れて画面を確認すると“アイツ”からで口の端が上がった。

タイミングがいい男だ。



「誠人か」



俺が口からそう零した瞬間反応したのは沙夜ちゃんで小声で「誠人に居場所は言わないで」と言って。



その声は悲しみを帯びていて、か細い。


言わねーから安心しろって、と意味を込めて左手を上げた。




“あぁ、俺だ”




電話口から聞こえる声は何かを決めたような強い声だ。



「どうした、何かあったのか?」

“まぁな。なぁ…アレってまだ有効か?”




誠人の口からその言葉が聞ける日が来るとは思わなかった。


自然と笑みが浮かぶ。



覚悟を決めた男に俺は「あぁ、まだまだ有効だ」と伝えれば男は安心したように息を吐くと、




“俺に護る力をくれ”




それは、覚悟を決めた強い声だった。




「あぁ、いいぜ。じゃあまた連絡するわ」




会話を終えてると、男の想い人である女を目で捉えてクッと笑い「よかったな」と俺にしか分からない言葉を掛ければ当然のように首を傾げた沙夜ちゃん。



「俺がアイツに護る力を与えてやるよ」



【リンside end】