【北条 誠人side】
何なんだよ、どういうことだよ。
「沙夜ッ」
呼んでも呼んでも応答はない。
メールも電話も出ない…こんなこと初めてだ。
あの言葉…どういう意味だよ。
何で急に。
俺のファンって何だよ。
今まで何もしてこなかったじゃねぇか。
もしかして、あの女に“何か”言われた?
あの女、多分何かを言っていた。
連れていかれる寸前、沙夜が気を失う寸前……思い出せ、思い出せ、思い出せ。
女の言葉を思い出せ。
“__…たら…___…”
「クソッ!!」
いつまでも沙夜の家の前にいるわけにはいかない…とりあえず今は帰ろう。
俺は納得のいかないまま、家へと飛ばした。
悩みも、苦しみも、悲しみも、苛立ちも全てを吹っ飛ばかのようにスピードを上げて、家を目指した。
家に着けば時刻は15時過ぎほどで、まだ学校は終わっていない時間。
だけどもう学校に戻るという選択肢も気力もなかった。
そんな時間に帰ってきたけど家には親父もお袋も不在、夜から仕事である兄貴がいた。
兄貴はリビングでくつろいでいて録画して溜めこんだドラマを見ている。
あぁ、今人気モデル兼俳優の刑事ドラマか……確か沙夜も気に入ってるドラマで俳優も気に入ってたっけか。
はぁ、クソ…ムカつく。
「チッ…」
「あ?何、お前帰ってたの?」
「今な」
「機嫌悪いな。沙夜ちゃんとでも喧嘩したのか?」
「別れた」
「ふーん……はぁ!!?マジかよ!?」
マジだよ、嘘ついてどうすんだよ。
「なんでだよ!」
なんで?そんなん俺が一番知りてぇよ。