中々回転してくれない頭を回転させて何分後に迎えに来てくれるのかを考える。
「あぁ、お母さんは今来れないからお兄さんが来るそうよ」
『え…』
「はぁ??」
不意打ちの爆弾発言に過剰に反応したのはユカで「何で千也さん?いや見たいけど、千也さんのせいで沙夜が苦しんでるわけで。てか車内は密室、沙夜は病人、2人きり!危ないシチュエーションじゃない!」と千也に会いたいんだか怒りたいんだかよく分からない発言をした。
私は別に会いたくないとかそんなんじゃないけど2人きりってのがちょっと。
迎えに来てくれることは有り難いんだけどね。
後3分ほどで来ると言われ、何とか歩けるのでユカに肩を貸してもらいながら裏門へと向かった。
裏門に付いたけど千也はまだ迎えに来てない。
寒いし熱いし、わけ分かんない。
だんだんと手から汗が出てきてそれを拭おうと鞄の外ポケットを見ると開けっ放しでハンカチが入っていなかった。
『ユカ…ハンカチ、ない』
どうしようという意味も込めて言えばユカは辺りを見回して「あっ!」と大きな声を出すとそこへ走っていってしまった。
どうやらハンカチはあるみたい。
よかった。そう安心した時だった。
「はい。確保」
『えっ…?』
すごいスピードで黒いワゴンが裏門に止まったと思ったら、3人の男が車から出てきて私に向かって近づいてくると、さっきのセリフを口にしてその手が私を掴んだ。
そしてそのまま引きずられるようにして車に連れていかれる。
『やっ…いやッ』
「コイツ熱くねぇ?」
「うわー熱あるわ」
男たちは熱があると分かっていて、それでも車に引きずり入れる。
叫び声で私に何かあったと分かったユカは「沙夜ッ!!」とすごい血相で走ってきてくれてる。
だけど届かない…追いつかない。
「…ッ沙夜!!」
『ユ、カ…』
ついにユカは私に追いつくことができなかった。
私が伸ばした手も、ユカが伸ばした手も…届くことなく空を切った。
私はワゴンの中に荒々しく入れられた。
荒っぽく扱われ体が痛い。
その上、熱も出ているもんだから“逃げる”という選択ができない。
この男たちは誰?何のために私を拉致したの?
必死に思考回路を使う。
けど、その答えは目の前に現れた。
「ハロー、沙夜ちゃん」
その声は…前に一度聞いたことがあって、とても頭に来たから忘れるはずもない。
その顔も、私を汚いものでも見るように見下ろして恨んでいる目も忘れもしない。
『アンタは…』
「もちろん覚えてるよね?忘れたなんて言わせない。私忠告したよ?」
忠告したって言われても、私は千也の妹だから必然的に一緒にいることになる。どうしようもないのに。



