楽しく話しながら半分ほど食べたところでリビングのドアが開き、現れたのは千也だった。
起きてきたばかりでちゃんと整えられてない髪、寝間着のスウェット、それから“何でテメェがいるんだよ”と言いたげな顔。
誠人との間にバチバチと火花が散る。
あーあ、会っちゃった…て本当の理由はこれなんだけどね。
千也に誠人と合わせて、私は誠人のものだからって言うために。
『おはよ。“お兄ちゃん”』
笑って言えば眉間に皺を思いっきり寄せて返事をせずにキッチンに入っていく千也。
不機嫌だなぁ、朝から。
まぁその原因は大いに分かっていますけど。
私はこれが意地悪だなんて思わない、当たり前のことをしてるまでなんだから。
皿の中のものを全て食べ終えた私と誠人がリビングを出ようとドアに近づいたとき、誠人は振り返って両親に「ごちそうさま」と言うと朝食を食べている千也を見て言った。
「千也さん。俺、好きなもの譲る気ないですから。それじゃ」
いつもの“笑い方”を加えることを忘れずに。
千也は一度食べる手を止めた、けどまたすぐ動かして間を空けてようやく「いってらっしゃい」と言った。
それにちゃんと答えるとリビングを出て私は2階に鞄を取りに行き、下に降りると玄関で待つ誠人と外に出た。
いつものメットを被って、いつものようにバイクに乗るといつものように誠人のお腹に腕を回してギュッとする。
誠人は掴んでいることをしっかり確認し、バイクを発進させて目的地へと向かうのだ。
バイクを置いていつものように3人で登校して、いつもの教科担任の授業を受けて、そして眠くなって机に伏せてしまう。
お昼時間、朝よりも体が怠くて保健室に行ってみると体温計に驚きの数字が。
「38度2分!?」
付き添いで来てくれたユカが驚きすぎて大きい声を出した。
その声がすっごい頭に響いて、もう今すぐにでも倒れそうだ。
「アンタ今すぐ帰るよ。先生、私沙夜の鞄取ってくるね」
ユカはそう言って保健室を出ていってしまった。
頭が痛い、顔が熱い、クラクラする、瞼が落ちそう。
ていうか、ちょっと寒いかも…。
朝は平気だったのに。
寒気がして腕を摩ると先生が毛布をくれた。
温かいお茶もくれて飲んでいるとユカが鞄を持って戻ってきた。
「ねぇ先生、沙夜のお母さんは?」
お母さん何分くらいで…来るんだろ?



