「変な女?」

『アンタを自称自分のモノって言ってる気狂い女よ。カヨって言ってた』




そう言ったら「は?」と小さく言ったのを聞き逃さなかった。


まさか知らねぇとか言わないよね?この男…と思ったけどそうは言わなかった。




「忠告ってなんだよ」




とそれを気にしだした千也。



はぁ…と大きく息を吐いてドア越しに千也に忠告の言葉をそのまま伝えるとガンッ!と壁を殴った音に肩を震わせた。



何…なんでコイツ怒ってんの?

意味が分からない、その一言に尽きる。



だけど、その意味も女の恐ろしさもすぐに分かった。



「沙夜、お前絶対1人になるな。絶対にだ」

『なんでよ』

「あの女はやべぇんだよ。半年前から俺にストーカーみてぇなことして、俺に関わりのある女は全て排除したって噂もあるし」




何よそれ…あの女本気でヤバい奴じゃない。
どうやら、私はとんでもない女に目を付けられてしまったらしい。

最悪の気分だ。



「いいから1人になるな」

『分かった』

「トイレに行くときも友達と行けよ」



連れションとか…それ小学生以来やってないんだけど。

恥ずかしくてできそうにないけど…何かをされるよりはマシ。




『あと私からも1つ。外では私に構わないで、関わらないで』




見られたら私の身がもっと危なくなる、だから一緒にいるのは嫌だ。


千也は少し間を空けるとようやく「分かった」と返事をした。




「沙夜、夕飯できたってさ」




すぐ行くと言ってカーテンに手を掛けると1度手を止め、閉めた。


誰かに見られてるような気がしたけど、気のせいか。



『あーお腹空いた』



階段を下りていく私に黒い影が近づいているなんて、まだ警戒心が薄かった私は後悔することになる。



北条家の数メートル先にある電柱に1つの影ありて。



その影に付いている2つの目は今さっき閉じられたカーテンを見つめ…否、睨みつけ、拳を作り、歯をギリギリと噛み合わせて恐ろしい表情でもうそこにはいない“彼女”を見ていた。