最近はほぼ無視なんだけどね。



だから「無視しないで下さいよー」と眉を八の字にして泣きそうな犬のような顔をし、抱き付いてこようとする。

それを誠人が阻止して「触んな」と殺気と共に言うのだ。



その殺気、私としてはかなりビクッとしてしまうのに、ユウはヘラヘラしていて「誠人くんこわーい」とおちゃらけてる。



よくもまぁそんなことが言えるもんだよ。



天然なのか、長年の付き合いだからなのか、それともこの子も誠人みたいに強いからだろうか…理由がどれかなんて分からないけどこの子が強者ってことは分かる。



それとね、3人で登校するようになってから更に注目されるようになって視線が前以上にウザくてユカに愚痴ったら「あんたユウ君のこと知らないの?」といつか聞いたようなセリフを言われた。



それでわかった新事実、実はユウもイケメンということで全学年で有名らしい。



確かに顔は整ってると思う。
だから誠人とユウは1学年のイケメンTOPって騒がれてるみたい。



そのせいで私は女子から凄い目で見られてるわけね?



いっつも朝から逆ハー体験してるから、と言われても当然私は誠人しか興味ないんだけど、と言ったところでよね。


今日も女子からグサグサ刺さる視線を浴びながら校舎に入ると1年生とは校舎が違う為下駄箱で別れる。



「じゃあね」と手を振ればユウが「バイバーイ」と手を振り返してくる。



そんな彼は後頭部を叩かれて「俺にだっつーの」と言われてる。



その光景に自然と笑みが零れて癒されてしまう。



今日も平和だな、と思っていた私は分かっていなかった。



これから自分に降りかかる不幸を。

そんなもの知るはずもなく私は普通1日を過ごした。



___6時間目が終わり、掃除をしてゴミを捨てに行ったとき正門に1台の車が止まっているのに気が付いた。



誰だろ?誰待ってんのかな?



その時そう思ってあまり気にせずにごみを捨てて教室に戻りSHRを受け終え、下駄箱に着くとピコン!とLINEが入った。

それは誠人からで「正門で待ってて」とのことだったので私は正門へと踵を返した。



『あれ?』



そして気づく、掃除時間に見た車がまだそこにあることに。



まだ待ってる、相手待たせすぎでしょ。



そう思いながら正門に着いたとき車の運転席が開いて女性が出てきた。



ごくごく平凡な女性。



大人っぽい女性を見せようとしているのか赤いルージュに8センチくらいのヒールを履いてコツコツと特徴的な音を響かせながら何故か私に歩み寄ってきた。



は??ちょっと、何でこっちに来るのよ。
私、貴女と知り合いじゃないんだけど!?



近づく女に心の中で疑問の言葉をぶちまけ終えたときピタリと目の前で止まった女。



『あの?』