沙夜が言ったことをその耳が受け入れると、俺の視線はさっきの電柱へとやった。



すると影はこそっと動いていて何やら電話をかけているようだ。


相手は旦那さんか。
この女、終わったな。




『じゃあサオリさん“サヨナラ”』




沙夜の声と言葉にビクリと肩を震わせた女は急いで家に帰っていった。



「沙夜、お前さ」

『何?』

「不倫とか探偵とか何で知ってんだよ」

『んー、企業秘密?』



なんて可愛く言ってるけど。



「沙夜、お前怖いわ」

『ふふっ、じゃあ夕飯食べよ!あの女のせいで冷めちゃってるだろうから温めなおすね』



沙夜はそう言ってリビングに入っていった。


俺はその華奢な後姿を見て“沙夜は敵に回してはいけない。怒らせてはいけない”と実感した。


俺の彼女は天使で、時に小悪魔。



【北条 誠人side end】