沙夜が女にそう言えば、女は顔をカッと赤くして今すぐに喚き散らしそうだ。


そんな女に沙夜は「いいんですか?私知ってるんですよ?」と意味が分からないことを言い出した。



「何をよ」

『職場の人と不倫してるの』

「…ッ、してないわ」



この女、不倫してんのかよ。


「しかも年下ですよね?」と言った沙夜の言葉に、自分より年下の男を食ってんのかよ…と引いた。



旦那がいるのに俺にちょっかい出して、不倫までして最低だな。



『そうですか。してないって言い張るんですね』

「実際してないもの」



女は冷静を装っているけど目は動揺している。



『そう。実は証拠だってあるんですよ。それ、旦那さんに渡すので潔く離婚してくださいね。このままだと旦那さんが可哀想です』

「ふざけてんじゃないわよ!そんなこと許さない!」



証拠を何故か持っているらしい沙夜に少しゾクッとしたけど、この女…不倫してること認めたし、言ってることがクソみたいだ。



「ふざけてんのはテメェだろ」



黙って見ていたけど、もう我慢ならねぇ。
俺もこの女に言ってやらねぇと気が済まねぇ。



「テメェが許すゆるさないの立場じゃねぇよ」

「誠人、くん…」

「旦那がテメェを許すか許さないか決めんだよ」



でもまぁ…



「許してもらえるとは思えねぇけどな」



今までそれだけのことをしてきたから当たり前だろう。



「旦那に許してもらえず、別れを切り出され、子供には軽蔑の目で見られ、職場の人たちには可哀想な目で見らえればいい」




女は俺の言葉にカタカタと震え始め、顔は真っ青になっていた。



『あ、でも旦那さんは別れを切り出すと思いますよ』

「何言ってんのよっ…」

『旦那さんアンタが浮気してるんじゃないかと疑って探偵を雇ってるんですよ。今だってちゃんと見張られてますよ?』



見張られてんのか…あぁ、いた。
5メートル先の電柱に気配を感じる。



この女結構な声量で喚いてたし聞こえているだろう。


この女は旦那といつかは別れる運命だったんだ。


俺の沙夜が手を下さなくてもこの女は終わっていた。


プライドの高い女は別れた後この街にとどまるはずがない。



ということは街を出て、二度とこの街に姿を現すことはないということ。



こういうことを世の人は“自業自得”と言う。
全ては自分が招いた結果だ。




「恨むなら自分を恨めよ。他人を恨むのは筋違いだぜ」

『それと、もう帰った方がいいかと。状況を悪化させたくないならね』