【北条 誠人side】
「いただきます」と同時に手を合わせて手料理を食べようとしたとき。
_____ピンポーン。
と誰かが邪魔をした。
たく、こんな時間に誰だよ___と思ったがもしかしてと、その邪魔者の正体が分かってきてしまい舌打ちをした。
『誠人?出ないの?』
とドアを開けに行かない俺を不思議に思っている沙夜。
「多分あの女だ」
と言った俺の言葉にピクリと反応し、さっき俺と同じように「チッ…」と舌打ちをした沙夜。
『もうこの家に来てないんじゃなかったの?』
「来てねぇよ」
沙夜と1ヶ月前、1週間限定の付き合いをしていた7日目のあの日撮った写メを見せた次の日から女は俺ん家に近寄りもしなかったのに…何で今日来てんだよ。
突然の訪問者により俺と沙夜のテンションは急降下。
このまま丸分かりな居留守を使って帰ってくれるのを待とうと思っていたけど。
ピンポーン…ピンポーン…ピンポーン。
一向に鳴りやむ気配がない。
呼び鈴をしつこく鳴らす女に、向かいに座る沙夜はさらに苛立ちを覚え再び舌打ちをした。
『もう出てあげよう』
「マジで言ってんの?」
『だって出てくれるまで帰る気配ないじゃん』
「わーったよ」
アイツと顔を合わせるとかマジだるい。
用件聞いてすぐ帰ってもらおう。
家の中に入って来ようもんなら…最悪殴る。
『はいはい、物騒な考え辞めてさっさと追い返そう』
沙夜はそう言って俺の手を引くと玄関へと向かい、その扉を開いた。
「誠人く___」
『何ですか?サオリさん』
女は俺じゃなくて沙夜が出てきたことに驚いて眉間に皺を寄せた。
「何でアンタがいるのよ」と言いたげな顔。
「誠人くん夕飯まだだよね?私作ってきたの」
この女は…一体どこから今日俺以外家を出てるって情報を掴んできてんだよ。
お袋だって言ってねぇはずだ。
だってこの前、大喧嘩っつーか俺の過去を知ってこの女に怒鳴り込みに行って縁切ったってーのに、よくもまぁお袋がいないからってのこのこ北条家に来ることができたな。
マジでどういう神経してんだよ。
「よかったらこれ、食べて?」
差し出してきたのはタッパーに入った手料理。
図々しいな、しかも目の前にいる沙夜をガン無視しやがった。
『図々しいです』
「なッ…何よアンタ!彼女面してんじゃないわよ!」
『彼女なんで。ていういか夕飯も間に合ってるのでお引き取りください』