もちろんその犯人は…



『福澤!急に口に物入れてこないでよ!』



残念男こと千也だ。



「千也って言えよコラ」



千也ね…言ってやんねーよバカ。

べーっと舌を出して門を開け、千也よりも先に中に入ると玄関のドアの前で腰に手を置き千也を待つ。



早く来い、と言うように。


それを分かってか分からずか。千也はのろりのろりと歩いて私の所に近づいている気がしない。



こんなに遅いんじゃ誰だってイライラする。



ようやくドアの前に来た千也はポケットから鍵を取り出して扉を開いた。


「お邪魔しまーす」と泥棒のように足音をたてずに入ると中は真っ暗___てのは当たり前で、千也が電気をつけてくれた。




『うっわぁ…』




何これ…。

廊下長いし広いし、リビングは想像以上に大きい…キッチンも使いやすそうで凄い。


て、待って。



『ねぇ』

「あ?」

『この家に今まで2人で住んでたの?』

「んなわけねぇだろ」



こんな広いのに2人で住むかよ、と言う千也。
え、じゃこの家は何?




「この家は親父が増える家族の為に設計して作ったんだよ」




と簡単に言って自分の事のように口角を上げた千也。


その顔が色っぽくて見惚れてしまっていたなんて絶対に言わないけど、今そんなこと言ってる余裕なんてない。




『はい!?私とお母さんが増えるから!?』

「あぁ」




それ以外に何がある、というような顔。
つくづくムカつく男。


それよりも正一さんがここまで真剣に考えていたなんて。



「沙夜の部屋教えてやるよ」



そう言って連れていかれたのは2階で、ドアが3つあってそのうちの1つ、手前にあったドアノブに手を掛けて中に入った。


第一声、それは凄いでも可愛いとかでもなくて。



『広ッ!!』



それだった。

4畳半とかだと思っていたのに見てみるとそんなもんじゃなくて…10畳ほどあった。



白の可愛らしいベッドに薄ピンクのカーテン。



円形のテーブルにふわっふわのカーペット、高そうなドレッサーまで。



口をあんぐり開ける他ないこの状況。


そして私は気になりだしてしまって仕方ないことがある。



それは___千也の部屋。