『ふぁっ…おはよ』

「おはよう」



眠い…すこぶる眠い。
これだから朝は苦手で嫌なのよ。


また瞑ってしまいそうな瞼を無理矢理上げて目を擦る。

だけどこれだけで目がちゃんと覚めるはずもなく、また瞼が落ちてくる。


あぁ、まだ眠たい。
今すぐベッドに戻____



「ねぇ沙夜、今日私の恋人と食事に行こうね」



完全に目が覚めた。

ついでに言うと飲もうと思って口に含んでいた麦茶を噴き出した。



「汚いッ」


いや、これはお母さんのせいだから。


『ねぇ、何?!』

「何が?」



と首を傾げるお母さんにハァ…と頭を悩ませる。



『お母さんの恋人と食事ってことよ!』

「そうよ?順番間違えたけど、お母さんには恋人がいるの」

『それは知ってる』

「あ、やっぱり?」



やっぱり?て何よ、分かりやすすぎなんだよ。
それに順番間違えたって間違えすぎでしょ。


食事を誘う前から恋人がいることを、まずは先に打ち明けるよね?


これだからお母さんは…。



「それでね、この前のデートで食事しましょうってことになってね」

『で?相手に子供は?』

「いるわよ。20歳の息子さんが」




20歳…3つ年上、しかも男。


しかも話を聞けば建築会社社長で、息子は名の知れた某大学に通っているらしい。


別に嫌って訳じゃない。


正一さんって人と息子って人を受け入れないわけじゃない。


ただ話が突然すぎるのよ!
何でお母さんはもっと早く言うことができないの。



『それで時間は?』

「今夜7時にNAKAGAWA HOTELのレストランよ」



これまた高級な食事会で…。


私テーブルマナーとかちゃんと習ってないし知らないんだけど?


絶対ヘマするパターンだよ。



『分かった。学校から帰ったらすぐ準備するから』

「うん、そうして。ちゃんとした格好するのよ?」




言われなくたってそうするつもりよ。

いっその事、お母さんに負けないくらい素敵な格好してやろうか?