『……誠人』
小さく俺を呼ぶ沙夜に「ん?」と言えばありがとうと礼を言われた。
それは助けてくれたことに対しての例だよな。
そんなのいらねぇ…礼なんかいらねぇ。
「悪い…護れなくて」
『ううん。あのまま来てくれなかったら…きっと私、あのまま襲われてたから…』
だからありがとう、と彼女はもう一度礼を言った。
今にも泣きそうな震えた声で。
けど、不覚ながらその姿に可愛いと思ってしまった。
はだけてる胸元を見て怒りが込み上げやっぱりあと何発か殴らないと気が済まない、そう思いつつも……少しだけ欲情した。
だから…
「何された」
『…え?』
「だからあの男共に何された」
汚れた手で俺の大事な女に触りやがって。
『…押さえつけられて、抵抗したけど…キス、されて』
「は?」
おい待てよ、あの野郎俺の沙夜にキスしただと?
キスされたと知り、さっき以上に怒りが込み上げてきた。
やっぱりあの1発じゃすまねぇ、足りねぇ…。
あと20発ぐらい入れときゃよかった。
あの時すぐに立ち去ったことを少し後悔したが、後日その罪を俺の拳で償ってもらおうじゃねぇか、と考えた。
「で、他には?」
『足、触られたり…胸揉まれたり』
聞いているだけで腹ん中のものが沸々と煮えたぎる。
『それで、服…破られて……その、』
「もういい」
『誠人っ……』
「もう何も言うな、思い出すな」
もう我慢ならねぇ。
「沙夜」
惚れた女の名前を口にすれば俯かせていた顔を上げ、綺麗な瞳が俺を捉えて離さない。
優しく抱きしめると、白く細い腕が俺の背中に回され、力いっぱい抱きしめ返してきた。
一生そうしていて欲しい。
可愛いと愛おしいが今にも爆発してしまいそうになる。
俺の理性、お願いだから耐えろよ。
「はぁ……」
俺以外の男っつーか、オスをその瞳の中にいれさせたくねぇな。
俺だけに溺れて、頭ん中も心ん中もいっぱいにして放してやりたくねぇ。
沙夜を好きになって、手に入れて異常すぎるくらいに放したくないと思ってしまっている俺。
嫉妬深い男だってのは多少なりとも分かっていたつもりだったが、さすがにここまで嫉妬深い男だとは思ってもいなかった。