黒髪で無造作にセットされていて、漆黒の瞳で私のなにもかもを見透かしているようだった。
カッコいいと言うよりも綺麗と言う言葉が似合っていて、とても青春時代ヤンチャしていたようには見えない人。
言葉使いも誠人みたいに荒っぽいものではなく、とても優しい言葉使い。
でもそれは私とユカを怖がらせないようにとワザと使い分けてくれているのかもしれない。
「おまたせ」
そう言ってマスターが運んできたのはケーキセット。
真っ白なショートケーキとティーを置き、モンブランとコーヒーをユカの前に置いた。
リンさんとその隣に座る副総長の…確かリンさんがヨウスケと呼んでいたはず、ちゃんと紹介されたわけじゃないからリンさんがそう呼んだのを微かに覚えていただけで、そのヨウスケさんの前にはコーヒー、リンさんの前にはカプチーノが置かれた。
一番に口に入れたのは赤く艶やかな苺、ふわっと甘味が口の中に充満し、次の瞬間には酸味が広がっていく。
次に甘いクリームと柔らかなスポンジをフォークですくって口の中へと押し込んだ。
甘い…美味しい…自然と笑みが零れてしまうほど美味しくて驚いた。
「美味しい」と素直に感想を呟けば「俺の手作りだからね」とマスターが言いさらに驚かされた。
失礼ながら元不良がお菓子、しかもケーキ作りが得意で…それにそこらのケーキ屋さんよりもいい味を出していることに驚きを隠せない。
リンさんとヨウスケさんが飲み終えたとき、私とユカもちょうど食べ終えて「マスターまた来ます」と告げて店を出た。
このケーキの会計もリンさんがカードで済ませてくれて、また頭を下げた私だった。
「じゃあ家まで送ってやるよ」
『え……と』
「遠慮すんな、甘えとけ。別に家つきとめて悪さしようってわけじゃねぇよ」
今日のこの短時間で悪い人でないことは十分に分かった。
リンさんの優しさに甘え送ってもらうことにした私とユカ。
近道と言われある路地裏に行ったリンさんの後を追う。
次の角を左にリンさんが曲がろうとしたとき___
「見んなッ」
慌てた様子でそう言った。
だけど…もう時すでに遅しって感じで、私はリンさんが止めるよりも少し早くソレを見てしまった。
確かに…見なかった方がよかったのかもしれない。
だけど、見てしまったから…
『…誠人』
その人は誰?
「見んなつったろッ」
なんで、キスしてるの…?
「馬鹿野郎がッ」
その人は、新しい彼女…?
『___…ッ』
涙が溢れてくる。
どうしようもない程溢れる、流れ出る。
もう誠人の隣は私じゃない人がそこにはいた。
私じゃない他の人と熱いキスを交わしてた。
声を押し殺してポロポロ泣く私を抱きしめてくれるリンさんは「馬鹿」だの「アホ」だの言っている。
確かにそうかも、リンさんの言うことを聞いていたらこんなに心が傷つかなくてすんだかもしれない。



