普通だろ、と続けて言ったリンさんは目の前にあった水をグイッと気持ちよく飲み干した。
飲み干したと同時に立ち上がったリンさんは、私の手を取ると微笑んだ。
その微笑はもう行くぞ、楽しませてやる…と言っているようでやっぱりリンさんたちに付いてきて正解だったのかもしれない。
モスを出てリンさんが向かったのはショッピングモール。
しかも買ってやるから好きなの選んでいいとまで言われた。
ユカは本当に!?と驚いて喜んでるけど、私は驚くを通り越して少し引いてしまった。
だってリンさんは前から私のことを知っていたようだけど、実際会ったのはお互いに今日が初めてで、しかもそんな深い友情があるわけでもない。
ましてや恋人でもないのにこんな女に、物を買い与えるリンさんの神経が分からない。
断っても買っていいって言うし、しつこく断ればしつこく買えと命令口調になった。
『分かった。買いますから…』
結局折れたのは私の方で、そんな私を見たリンさんは満足そうに笑った。
もういい。なんならリンさんのお金を全部使い切る勢いで買ってやる、と心に決めて1つ目のショップに入った。
「これ可愛いー!」
『……』
「あっ!こっちも!」
『……』
「これに決~めた!」
『……』
「あれ?沙夜は選ばないの?」
ユカの容赦ない豪快な選びように唖然とした私。
おーいとユカが顔の前で手を振るも私の意識は別の所にある。
ユカみたいにガツガツいかないものの私もようやく服を選び始めた。
今年流行しているボーイフレンドシャツや水着を選んでいく。
あと少しで夏休みに突入するため、夏休み海に行きたいと思っているから水着は絶対で、水着を選んでいる私を見たユカは浴衣も買おうよ!ととんでもないことを言い出した。
『何、言ってんの……?』
「ほら早く〜」
もちろん入っているお店は有名ブランドばかりで1つ1つが高いのに浴衣なんてとんでもない。
近くにあった浴衣の値を見てみればゼロが1つ2つ多い。
安くても2万円くらいだ。
高くて…見たくも言いたくもないと思う。
その値段に引いてしまってる私を放置して、鼻歌を歌いながら浴衣を選んでるユカ。
これ可愛いと色んな浴衣を手にして悩んでいる。
その浴衣たちの値段は考えたくもないけど、ユカが選んでいるのは絶対高いものばかりだと確信が持てる。
ユカとは反対に、中々選び始めようとしない私を見かねたリンさんが「こっちに来い」と腕を引いてズラリと浴衣が並べられたとこに私を連れてきた。
「これにしろよ」
半ば強引に連れてこられて強引に浴衣を押し付けてきた。
私の好みの浴衣かも分からないのに押し付けてくるのはどうかと…。
恐る恐る浴衣を見てみれば白い生地に真紅の花が咲いている綺麗な浴衣だった。



