「嘘ついてごめん」
嘘の塊だったこと。
「賭けの対象にしてごめん」
賭けの対象にしていたこと。
「俺みたいな男が沙夜の純粋な気持ちを弄んでごめん」
私の気持ちを弄んだこと。
「俺のせいで襲われそうになったこと」
とヤられそうになったことまで謝ってきた。
私は相槌を打たずに聞くと名倉は「今まで悪かった」と言って謝り終えた。
今更その言葉を口にされたって…3年前から私の言葉は決まってる。
『許さない』
振り絞って言った言葉にピクッと反応した名倉は合わせていた視線を逸らした。
それだよ…そういうのだよ。
『なんで逸らすの?』
そうやっていつも、いつも…
『都合が悪くなったら逸らす癖』
今も昔も。
『大っ嫌い』
立ち上がって名倉に近づいて見下ろす。
『歯ぁくいしばれ』
低く、小さく呟いた。
周りの目なんてどうでもいい、コイツさえ…この男さえ関わらなければっ。
名倉が歯を食いしばったのを確認して拳を強く握り振り上げた。
勢いをつけて振り下ろした拳はしっかり名倉の左頬にめり込んで、名倉の体はソファーの上に倒れた。
「…っう」と小さく呻き声を漏らした名倉を鼻で笑い「もうその顔見せないで」と吐いて未だにソファーに腰を下ろしてる誠人の手を引くと席に2千円置いて店を出た。
「おい」と呼びかけられるも無視をする。
路地に入った時ようやく手を放すと大きな溜め息をついた。
『噂は噂にすぎないね』
誠人はその言葉の意味が分からないというように「は?」と言った。
『夢なんて嘘』
夢を見せてくれると期待したけど夢なんて見れなかった。
『理想の彼氏じゃなかったね』
そう言えるのは後にも先にも私、ただ1人だろう。



