それに魑櫻ってあの魑櫻だよね?
チラ…とユカを見ればユカはゆっくり頷いた。
「石橋ありがとう」
お礼を言って席に着くとユカは「なんで魑櫻?」と私に訊いてきた。
いやいや私も分からないから!!
私は関係性ないよという意味も込めて顔の前で手を振ると「じゃあどういうことよ」と言われた。
そんなこと言われても…。
結局分からないままモヤモヤした気分で授業を受けた。
なんで魑櫻が私を知っているのか、なんであんなメールを送ったのか…そればっかり考えてしまい授業の内容なんて全然入ってこなかった。
お昼は屋上に誠人を呼びつけて3人で食べた。
ユカがメールのことを言うと「そうか。良かったな」と興味がない返事をした。
『ねぇ、誠人はさ魑櫻って知ってる?』
「まぁ、それなりに」
元不良の彼は当然知っていた。
『知り合いいる?』
「…いや、いねぇ」
『いないんだ?』
「…ん、あぁ」
知ってはいるけど知り合いではないらしく、やっぱりモヤモヤがとけない。
もしかしたらって思ったけど、予想が外れた。
___放課後になっても解けない謎に対し、私は禿げそうになった。
昇降口で待っている誠人と手をつないで校舎を出ると、デートしようとも何も言ってないし約束もしていないけど始まった私たちの放課後デート。
今日はお洒落なカフェに行こうと言った私に誠人は黙って連れて行ってくれる。
近道だと言われ繁華街の中を通っていると目の前から不良の集団が近づいてきた。
うわ、明らかにガラの悪い…。
あんまり見ないほうがいいのだけれど、私は悪い癖があって逆にそういうものをガン見をしてしまう。
このとき目を逸らすか、隠れるか、来た道を引き返せばよかったと後悔する。
『…えっ』
なんで…どうしてアイツがこの街にいるの…。
なんでここにいるの。
体が固まり、冷汗が流れ、小さく震え始めた。
「どうした?」
私の異変に気付いた誠人は心配そうな顔をして言った。