それなのに、こんなにも胸が痛くて苦しい。
だから恋愛なんてしたくなかった。
こうやってちょっとしたことに心を揺さぶられて、生産性のない嫉妬という感情に囚われる。
もうそんな思いはしたくない。
私に恋愛は向いていないんだって、彰人の時に学んだはずだった。
爽くんに本気で口説くと言われたときだって、同じ結論に至ったはずだった。
それなのに…。
「莉子先輩…」
私がごちゃごちゃ考えている間に車は発進していて、本当にいつの間にか駐車場に着いていた。
名前を呼ばれて反射的に運転席へ振り向くと、そっと手が伸びてきて濡れた頬を拭ってくれる。
その優しい仕草で自分が涙を流しているのだと知った。
「…っ、あ、違うよ、これは…」
「大丈夫、わかってます」
温かい手に頬が包まれる。
ポロポロ流れる涙は止まらずに、爽くんの手を振り払うことも出来ない。
それでも甘えちゃダメだと自分を叱咤して、なんとか笑顔を作る。



