溺愛予告~御曹司の告白躱します~



「……っ、水瀬のバカ!!」


静まり返ったエントランスに反響するほど大声で叫ぶ。

『俺には言えないことか』だって?!

言いたかったに決まってるじゃん!
聞いてほしかったに決まってるじゃん!

いつだって何だって相談してきた。
誰よりも近い存在で安心して一緒にいられた。

『ただの同期』と自分に言い聞かせながら、居心地のいい距離感を失いたくなくて、ズルいことは承知で側にいた。

そんな水瀬に泣きたいほど辛かった出来事を真っ先に話したかった。
一緒に解決策を模索したかった。

化粧濃くするとかパンプス変えるとか下らないことじゃなくて、仕事で信頼を勝ち得るために次にどう動くか、一緒にお酒を飲みながら熱く語りたかった。

でも水瀬が馬鹿なこと言うから。
爽くんに庇われたなんて言えば、やっぱりその程度の人間なんだって水瀬に思われるのが嫌だから。

もう嫌だ。
王子なんて、御曹司なんて…。


「御曹司なんてみんなハゲて太って虫歯まみれになってモテなくなってしまえ!!」