「でも莉子先輩、蓮兄のこと好きですよね?」
ひゅっと息を飲む音がやけに大きく聞こえた。
「……え?」
「蓮兄だって、莉子先輩のこと引くほど大事にしてるっぽいし」
「なに、言って……」
「まさか気付いてないわけじゃないですよね?蓮兄あからさまだし。この前のエレベーターで会った時も、俺のこと凄い目で見てた」
思い出したようにクスッと笑った爽くんとは対象的に、私は表情が固くなっていく。
「なんで見て見ぬ振りしてるのか知らないですけど。俺そういう女の子見ると気になっちゃうっていうか」
「…女の子って。私、一応先輩だよ?」
「わかってますよ。だから職場では口説いたりしなかったでしょ?」
あっけらかんと話す爽くんを前に、私は固まったまま。
「莉子先輩が蓮兄を好きだって確信したら口説こうと思って」
「……思って?」
「だからこれから本気で口説こうかと」
意味がわからない。
爽くんの言い方だと、まるで今日私がここに来てから、私が水瀬を好きなんだと確信を持ったことになる。
「はは、意味わかんないって顔してる」
「…なんで。怖い」
水瀬家はエスパーの家系なのか。
怖すぎる、水瀬帝国…。世界征服でも企んでるのか。



