「うん。よくわかったね」
「喧嘩でもしました?」
ーーーー喧嘩…?
喧嘩と呼べるものなのかどうかもわからない。
同期として、それなりにお互いのことをわかっていると思っていた。
お互い相手がいる時もあったけど、少なくない時間を共有してきた。
だからこそ、あの発言がショックで悲しかった。
「俺にしといたらどうですか?」
爽くんの質問に答えずに考え込んでいると、温かいうどんを食べて少し顔色が戻った爽くんがニコニコ笑うでもなく、かといって真剣に口説くでもなく、本当にちょっとした疑問のように聞いてきた。
三週間前くらい前に『次は莉子先輩にします』と謎の軽い宣言をしてから、ポンポンと冗談のような言葉を掛けられるだけだった。
喧嘩して落ち込んでいるのを慰められているんだろうか。
それで口説くという選択肢なのが爽くんらしいと、少しだけ笑えて気分が浮上した。
「残念だけど、私じゃ爽くんのお相手の対象にならないよ」
彼氏と別れたのは一年半も前のこと。
爽くんと営業課で出会うよりももっと前。
笑いながらそう伝えると、爽くんからとんでもない爆弾が落とされた。



