「なに。別の女と結婚するかもしれないのにお前に手ぇ出そうとしてると思ってたわけ?」
「いや、そういうわけじゃ…」
「他の女になんか興味ない」
真っ直ぐに私を見つめる彼の手が頬を包む。
その手のひらの熱さにつられるように、私の顔も湯気が出るほど赤くなっていく。
嬉しいのに恥ずかしい。
今までただの同期だと言い聞かせて距離感を図っていたのが、急にこんなにも甘く蕩けるような雰囲気に慣れることが出来ず、むず痒いことこの上ない。
「…どっかの社長令嬢とかがライバルになったりしない?」
「しない」
「『あなたなんか蓮様に釣り合わないのよ』って階段から背中押されたりしない?」
「しねーよ。いつの時代の昼ドラだ」
本気でそんなこと思ってるわけじゃない。
でもこんなことでも言っていないと、この後のことを考えたらもうどうしたらいいのかわからないほど緊張しているのだ。
ありえないほど鼓動が早鐘を打っている。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、水瀬がとんでもない爆弾を落としてきた。
「なぁ、いい加減ベッド連れてっていい?」
「な…っ」
「ごちゃごちゃ考えてる頭ん中俺だけにしたいし、そのよく回る口が俺の名前しか言えなくなるようにしてやりたい」
「ば…っ」



