すると手のひらがくるっと反転し、ぎゅっと指と指を絡めて握られた。
「だから佐倉の良い意味で空気を読まず、会社の中で俺を普通の男扱いする所に助けられた」
「…うん」
「もうそれだけで佐倉に惹かれて、すぐに当時の彼女と別れた。それから営業で一緒にいる機会が増えて、アホみたいな会話も楽しくて」
「ふふ、うん」
「お前が元カレに浮気されたって知った時、絶対奪ってやるって決めた。でもお前はバカな男に尽くして倒れて…。どれだけ理不尽な仕事も酒飲んで愚痴ったらすぐ切り替えて働いてたお前が、あんなボロボロ泣く姿見たら…。奪うよりも守らなきゃって思った」
握られた手の甲を親指に撫でられる。
手がくすぐったいのか、言われた言葉がくすぐったいのかわからないけど、肩がきゅっと竦む。
それと同時にじんわりと目頭が熱くなってきて、グッと奥歯を噛み締めた。
「そっからはもう、一緒にいればいるだけ好きになった」
嬉しくて、言葉が出ない。
私が思うずっと前からそんな風に思っていてくれたなんて……。
自分の気持ちや水瀬から逃げている間、いつだって側で守ってもらっていたというのに。
申し訳ないと思う反面、胸の奥が温かいもので満ち溢れていく。
「…爽が営業に配属になるタイミングで異動になった時、死ぬほど焦った。あいつに持っていかれるんじゃないかって」
親指で遊んでいた手がぎゅっと力強く握られた。



