普段クールぶってる水瀬らしからぬ発言に、言った本人が照れていないのに私が爆発寸前なほど恥ずかしい。

一体どうしてしまったと言うんだろう。


『お前、俺のこと好きだろ』


真面目な顔で仕事をしてるフリをしても、浮かんでくるのは先程の水瀬の言葉。
頬に触れられた大きな手の感触。

もう集中力なんて欠片も残っていない。
パソコン画面に映し出されているのは

『営業報告書おおおおおおおおおおおおおおお』

という気合いが入ってるんだか何だかわからない代物。

このままではいけない。
社会人としてもマズイし、人としてこれ以上顔に血が集中したら指先から干からびてしまう。
なんとか全身に血を巡らせなくては。

深呼吸しながらバックスペースを連打する。
最低限今日の報告書くらいは作らねばならない。

どれだけ動揺していても仕事は待ってくれない。
先日水瀬がドリームカンパニーと詰めてきた内容を確認して、また生田化成にも顔を出さなくては。

今日は金曜日。週末に何とか体勢を整えよう。
今はどれだけ考えても『どうしよう』しか出てこない。