けれど、やっぱりすごく美味しいわけではない。彼女だって本当は温かいものを、と思っていたかもしれないが。


「……あれ」


 私は疑問に思った。昨日の夜の段階で、弁当や新しい飲み物はこの部屋になかったはずだ。じゃあ、これはいつ、ここに現れたのか。
 自動で来るような馬鹿げた考えを持ってるわけじゃない、答えは一つしかなかった。


 多分、朝の内に彼女が……雨が私の為に買ってきてくれたのだ。その時にはまだ温かかったのかも。
 途端にお粥の塩味が強くなる気がし、喉が食事を通すことを拒む。


「……何なの、何なのよ。優しくされても辛いだけだよ」


 無理矢理にお粥を頬張り、平らげていく。
 美味しいわけじゃない、すごく、すごくしょっぱい。
 そう、しょっぱくて、美味しくもなくて、冷たいはずなのに。食べていたそれは、どうしてか心の中を暖かくしてくれるような感じがしていた。