救急箱だ。
 私の安いプラスチックの入れ物とは違って、木でできた救急箱。彼女は(ひざまず)くように私の足の前へ座ると、痛む右足を優しく持ち上げた。


「腫れが酷いわ。痛かったでしょう?」
「……別に」
「すぐに冷やしましょう。氷も買ってきてあるから」
「……いいって、すぐ治る」
「よくないわ」
「いいって! 構わないでよ!」


 着替えも飲み物も、何もかも用意してもらってもう十分だった。これ以上、この子に甘えるのはなんだか怖くなり、強い口調になってしまう。
 だけど、彼女は――


「お願い。これだけだから」