扉の先はリビング、部屋の片隅の椅子で座ったあの子が待っていた。
 他人の家を物色するというのは悪いと思っていたけど、つい見回してしまう。
 6畳くらいの部屋には、年月を思わせる少し黄ばんだ白い壁紙。右壁奥に寄せられた机と椅子、そして窓には閉じたカーテンだけしかない。
 引っ越しするとは言っていたけど、ダンボールとかもなく荷物は既に転居先へ送っているのだろうか?
 とにかく普通に暮らすには心許ない部屋なのは確かで、女の子の部屋だとはとても思えなかった。


「喉、渇いてる? 飲み物があるのだけど」
「あ、うん」


 そう答えると彼女は、机の上に置いてあった小さなビニール袋からスポーツドリンクを取り出し、部屋の入り口にいる私に手渡してくれた。
 封を切ると、ゴクゴクとすぐに飲み干してしまい、自分の喉が乾きに乾いていたんだと思い知った。
 飲み終えてからハッとする。

「あ、お金――」