「床で汚れないように、ビニール袋に入れてくれたんだ……」


 中にはバスタオルと無地の白いパジャマ。そして、新品の下着が入っていた。無難な柄、派手さはなく身につけることにためらいの必要もない普通の下着。


 何もここまでしてくれなくても……。


 ついそう思ってしまう。バスタオルを手に取ると、入っていることに気づかなかったのかひらひらと紙が床へ落ちていった。なんだろうと思い、頭を拭きながらそれを手に取る。


『余計なことだったかもしれないけど、ごめんなさい。服と下着を置いておきます』


 とても綺麗な字でそう書かれてあった。胸が更にチクチクと痛くなる。


 濡れたセーラー服で出ようなんて考えが頭に浮かんだからかもしれない。あの子の困る顔が見たいなんて、なんで思っちゃったんだろう。
 くしゃりと紙を握りつぶし、私はビニール袋へと投げ入れる。


 でも、信じたりしない。上げられて落とされるのがどれほど辛いか、信じて裏切られるのがどれほど辛いかは知っている。あんなに私を愛してくれていたはずの両親だって、最後はお互いの悪いことばかりを私に言っていた。だから絶対に信じたりはしない。


 私は体を拭き終わると袋に入っていた下着と、白いパジャマを身につける。サイズはぴったり、体格的にも私とあの子はほとんど変わらない。服のサイズが合わないなんてことはなかった。


 私の濡れた服と下着は、先程、服を取り出したビニール袋へと入れ、その口を固結びで縛る。


「ちょっと体がだるい……流石に疲れたのかな」


 なんとなく頭がぼーっとしてしまう。浴室の湯気はもうないのに、私の頭にはモヤがかかったようで……もしかしたら体の水分が足りないのかもしれない。
 ふらふらする体のまま浴室の扉を開け、頭に広げたバスタオルを乗せると、あの子の待つであろうリビングへと歩いていった。