頭と体を洗い終えて、私は蛇口を締める。換気扇は回っているのに湯気で浴室内が真っ白だ。
 あの子の言う通りなら、バスタオルと替えの服は外。気配はしないけど、もしかしたら外で待っていたりするかもしれない。気配を消せても不思議じゃない。


 濡れたセーラー服を着て出てきたら、どんな顔をするだろう。あんな無表情な子でも、少しくらい嫌な顔をしてくれるかもしれない。


 ――なんて酷い考え。相手が何を考えてるかわからないから、気に入らないからって、嫌がることをしようとするなんて、いじめてるのと何ら変わりないじゃん。


 ……別に何かをされるわけじゃない、私の生きる理由になるなんて言ってたくらいだ。信じてるわけじゃないけど。


 私は扉を少しだけ開け、目だけを出すように外の様子を伺う。玄関の明かりはついている、リビングの扉に付いているガラスからも光が見える。多分、あの子は扉の外にはいない。
 目線を下げると、床に置かれているものに気がつく。白いビニール袋だ。
 手が出せるくらいに扉を開ける。そしてそれを手に取り、私は浴室に戻った。