ビルの屋上から飛び降りようとした私を、引き止めてくれた赤い眼の女の子。
 そんな彼女に言われるがまま、私はあるアパートへと案内された。場所は私の家から反対方向の駅、逆側の二駅目。快速列車に乗っていたから実際の駅数まではわからないけど、そんなに遠くないが私の家から歩いていくには遠いところだ。


 アパートは私が住んでいる家によく似ていた。ボロボロでこの子には似つかわしくない。歩いている途中に彼女を観察していたけど、仕草や素振りは綺麗で、どこかのお嬢様かと思っていたのに、こんな家に住んでいるなんて。


「もうすぐ引き払う予定、違うところへと引っ越すわ」
「え……」


 自分の心が読まれたようで焦る。
 顔に出ていたのか、本当に心を読んでいるのかは、やっぱりわからない。
 雨はまだ降り続いている。彼女は私に赤い傘を手渡すと、滑りそうな鉄製の錆びた階段をトントンと心地よいリズムで登っていく。


 私もあんな風に綺麗な姿勢で登っていけば、美しく見えるのかな?
 彼女の後を追い、階段へ足をかけて、ゆっくりと登っていく。一歩、二歩と綺麗な姿勢で――