体に何かがぶつかったような感覚を覚えた。痛くはない、むしろ優しい衝撃。そして耳元で声が聞こえる。


「私が優しくする。私が貴女の生きる意味になる。今は辛いかもしれない、でも、私が助けるから」


 嘘だ、そんなの信じられない。絶対に嘘だ……。


「お願い、生きて。生きて……ほしい」


 雨が止んだ気がする。いや違う、まだ雨音は続いてる。
 私はゆっくりと目を開くと、私の上には赤い傘、そして目前に赤い眼の女の子がいた。
 なんで見ず知らずの私にそこまで言えるんだろう? 本当に嫌なんだ、私は死にたいんだよ。死にたいの……。


「うっ……うぅ……ぐ……す……うぅぅぅ……あぁぁああぁぁー!」


 まるでダムが決壊したように私は泣き出す。


 すごくすごく辛くて悲しくて、思い切り泣いたら何もかも忘れられるような気がして、でもこんな辛い現実から逃げられないことは知っていて、それでも彼女は優しくて、私を抱きしめてくれていた。


 信じない、……信じない!


 でも濡れた私の体には彼女の体は暖かくて、今、この時だけはこの優しさを信じられるかもしれない。
 ダメ、違う、信じちゃいけない。いけないの……。


 そんな葛藤が私の中で続く、続いていく。


 でも、私に生きてほしいと伝えてくれたとき。
 彼女は間違いなく、『嘘じゃない』と微笑んでくれていた気がしたのだ。