手を差し伸べてくれているのは知っていたが、私はそれに頼らず痛む体を起こしていく。
 寒いし、濡れた服は冷たい。それがかなり傷に痛む。


 この人が何を考えているのかがわからない。


 私は表情や些細な仕草を見て、相手がどう思っているのかをある程度、把握することができる。これができないと、相手が自分の言葉で怒っているのかどうなのかがわからないからだ。
 けど、いつ頃かそれも機能していない気もする。
 答えは簡単、自分の言葉がすべて、他人を苛立たせてるんじゃないかって思うようになったから。
 だから酷い目に合うし、目を付けられる。そう考えるようになったはずなのに、どうしても表情から他人を探る行動をやめることができない。


 だけど、目の前の女の子は今までの人たちとは違う。


 完全な無表情、赤い眼で私を見ているだけ。
 何を思って、何を感じて、何を考えているのかがまったく読めないから迂闊に喋ることができない。