「つぐみちゃん。彼氏とかいるの?」
「えー……そんなこと聞きます? 一応、いますよ? けど、お金がどうしても必要でー」


 彼氏なんていない。嘘も方便と言うやつ。要所要所でちゃんと距離を取らないと……私は口ごもると途端に話せなくなってしまう。どうせ一度切りの相手だ。嘘で固めた情報を言っても、どうということはないはず。
 電車が走る音の中、それからも何度か他愛もない話を続けた。笑顔だけを作るのは楽しくなくて、ふと男から視線を外す。


 学校の近くの細い道に似ている場所。右を見ると、似ているだけで別になにもないはずの高架下は、なんとなく嫌な気分になった。


「つぐみちゃんは猫とか好き?」


 左側から聞こえてくる男の意味のない会話、猫は私を置いてすぐにどこかへ行ってしまうから嫌いだ。でも、声の感じでわかる。きっとこの人は猫が好きなんだろう。だから私は、