「もう一度、奏に会いたかったの。賢くなるだけじゃダメだった、努力もしたわ。そして、ようやく見つけたの」


 そう、雨と私がもう一度出会えたのはただの偶然なんかじゃなかった。雨はどうしても私に会いたかったのだ。
 運命が雨の努力と私を結びつけてくれた。


「雨……私には話が壮大過ぎて、言葉にできないよ……。私にそんな価値なんて……」
「奏のおかげで私は雨という名前が好きになったわ。奏がいい名前だって言ってくれたから、嫌いだった名前が大好きになれた。貴女が自分を価値のない人間なんて言うなら、私が貴女を輝かせてみせる。その為ならなんだってするわ」
「違う……違うんだよ。雨」


 首を振り、私は目から涙が溢れ始めてしまう。一体、何度泣けば私は雨に届くんだろう。雨の想いに。
 私は雨にこんなにも想われて、こんなにもしてもらっているのに、何も……何も返すことができない。それが嫌で嫌でたまらない。
 雨からしてみれば小さい頃の私がやったことで十分過ぎるのかもしれないけど、今の私は彼女に何もしてあげられない。


「っ……!」


 ふと思い出す。
 私は何を聞いていたんだろう、雨の言葉の何を聞いていたんだろう。総一朗さんも言っていたのに、私はどうして気づかなかったんだろう。
 多分、私にしかできないことがある。これは世界中で私しかできないこと。それを思い出す。
 それは私のやりたいことへと昇華する。
 脳の中で未来を考えると真っ白な霧に覆われていたそれが今、晴れ渡る。


 見つけた、私のやりたいこと。


「……雨、お願いがあるの」
「奏?」
「雨が一つだけしてくれるって言ったお願いを使わせて」


 それは新幹線の中で雨が何か一つ、私にしてくれると言ってくれたこと。雨はゆっくりと頷いてくれた。