「そうだわ。奏、クリスマスというのは、サンタさんがプレゼントをくれるという話だったと思うのだけど」
「うん、世間ではそう言われているね」
「けれど、今まで私のところには来なかったわ。日付変更線を何度も跨いだせいかしら」
「いや、絶対違うと思うけど……なんか雨が言うと冗談に聞こえなくなるよ……」
「でも、今年は来たわ。可愛らしいサンタさんが」
「だ、誰のことかなぁ……」


 私は顔を窓の外へと向けながら照れ隠し。恥ずかしいことをズバっと言わないでほしいところだけど、雨にとっては純粋な気持ちなのかも。


「まさか、自分がサンタさんになれるとは思わなくて……奏に何も用意できなかったことが、少し心残りね」
「大丈夫だよ。私たちは高校一年生、雨がいいって言ってくれるなら少なくとも卒業までは一緒にいられる。つまり来年もあるんだよ」
「もちろん、もし奏が大学に行くと言うのならその間もいてくれていい。そうなると……六回くらいはクリスマスを楽しめるかしら?」
「大学生なんて気が早いなぁ。その頃には私も彼氏作ってて、クリスマスは彼氏と過ごすーとか言い出すかもよー?」
「その時は仕方ないわね、私も彼氏を作ろうかしら」
「えっ⁉」
「冗談よ」


 くっ、完全に騙された。そもそも無表情な上にサングラスまでかけて冗談なんて言われた日には本当かどうかがまったく読めない。
 確かに雨はスタイルもいいし、顔も整っている。ほとんどの異性の目には止まるとは思うが……問題なのはやはり無表情か。


「冗談を真に受けてる?」
「うっ……もう! 少し考えてるだけですぐ見破ってくる! 雨、嫌い!」
「悪かったわ、そう怒らないで?」
「ふーんだ」


 本当に私は子どもっぽいところが抜けない。こんなこともきっと、見破られているだろうけど、雨はきっと私の機嫌を取ってくれる。こういう自分の甘えたところは直さなくちゃいけないのはわかっている。
 けど、少しくらい甘えてもいいじゃない。今まですごく辛かったんだから。


「それじゃ奏、今年のクリスマスのお詫びも含めて何か好きなものを一つしてあげるわ」
「へ?」


 別にそんなことを言わせるつもりはなかった。ちょっと、雨を困らせたかっただけで……。


「いやぁ、そんなのいいよー! ほら、ね? もう怒ってないし!」


 始めから怒ってなんかいなかったが、彼女を安心させるためにも私は笑顔を見せる。それでも雨は。