「う……ど、どれにしようかな」


 その中でも安いものを探すが安いものはそれ相応、というか私の苦手なしいたけが入っている。我慢すればいけるけど、せっかくなら美味しいものが食べたい。
 だけど、こちらのそぼろご飯が敷き詰められているものは千円以上だ。私には手が出せ――


「奏、決まった?」
「あ……うーん」


 雨が手に持っているのはさっき私が見た安い、それ相応の……相応とは失礼なことを言っていると思うが、しいたけが入っていればどうしても相応だと感じてしまう。
 雨がこれを選んでいる以上、私はそれ以上の物を選んでいいのか。同じものにするべきじゃないんだろうかと悩み続けていると。


「ごめんなさい、配慮が足りなかったわね。えっと、奏が好きそうなのは……」
「え、あっ! ちょっと!」


 雨はそういうと私の分の弁当を選び始め、そぼろご飯が敷き詰められた弁当を手に取った。
 どうしてピンポイントで私の好きなものを選んでくれるかなぁ。


「美味しそうね、やっぱり私もこれにするわ」
「ま、まだそれでいいって言ってないから!」
「おかしいわね。よくそぼろのふりかけを買っていなかった?」
「うっ……」


 ピンポイントで選ばれたのはそのせいかー! 私は完全に言い負かされ、その弁当をお願いすることにした。
 すると、ちょうどいいタイミングで新幹線が到着するアナウンスが鳴り響く。


「あ、もうそろそろだね」
「ええ。水分も買ったし、忘れ物はないわ」
「ところで私たちの席は――」
「奏にはくつろいでもらいたいし、グリーン車を用意してあるわ」
「…………」


 グリーン車とか、私乗ったことないよ……。
 雨の気遣いに少しだけ心が傷むけど、今回、彼女と共にちょっとした旅行に行けるのが嬉しい。
 ホームへと到着する新幹線。年末だからか人の出入りは多く、ようやくといった感じで私たちはグリーン車席へと乗り込んでいくのであった。



 新幹線が発進してしばらく経った後、雨の言った通り、この席でくつろいでいた。
 普通席や指定席と違い、椅子もかなり豪華。更におしぼりまでくれる!
 だが、弁当を食べる時にお店でもらったおしぼりを使ったので、ここで頂こうがあまり意味もない気がするが。