「これは……カチューシャ?」
「実はバレッタと悩んだんだけど、雨にはこれがすごく似合いそうだったから……気に入らなかったら着けなくても――」
「奏、着けてみてもいいかしら?」


 俯いて話していた私の声を遮り、雨はそう言ってくれた。
 それが少しだけ嬉しくなって、私は頷くと雨は前髪をかき上げるようにそのカチューシャを身につける。


「どうかしら?」
「あー違う違う! 本来の使い方としてはあってるけど」


 私は赤いカチューシャを手に取り、雨の前髪を下ろす。
 そして今度はかき上げないまま、もう一度それを付けてあげる。


「これでよし……」


 私は二歩後退すると想像通り、真っ赤なカチューシャがとても似合う女の子がそこにいた。


「…………うん、似合ってるよ。すごく可愛い」
「ありがとう、奏。とても嬉しい」


 本心で雨はそう言ってくれたのだろう。きっと、無表情の奥では笑ってくれているのだ。
 私、ダメだな、ちゃんとしなくちゃ。私も本心を出して、ちゃんと伝えなきゃ……いけない。


「実はもう一つ、プレゼントがあるの」
「そんな、もう十分すぎるわ」


 私は雨の言葉を背中で聞きながら、もう一つの長いプレゼントを部屋から持ってくる。
 ラッピングは多少よれてはいるが心は込めたつもりだ。


 今度こそちゃんと言おう、私の言葉で伝えよう。
 まだドキドキしてるけど、多分言える。私は誤魔化さないよう、今度こそサンタさんになりきった。