私は痛む身体を引きずりつつも、ゆっくりと鉄製の階段を登っていく。かなり古いアパートの二階の奥の部屋、そこが今の私の……叔父の家だ。
 ドアノブに手を掛け回すと扉が開く。鍵が開いているということは叔父は家にいる。


「ただいま、お義父さん」


 私は叔父のことをお義父さんと呼んでいる。そう呼んでくれと頼まれたからだ。しかし返事はない。
 私は扉を閉めると、靴を脱ぎ、家へと上がった。
 そしてふすまを開けると――


 目前にグラスが飛んでくる。
 それは私の右側の額へと命中し、そのまま畳へと落ちた。


「奏……お前、何やってた……」