「そんなことない。私は雨の眼を見てると、安心する。とても綺麗で吸い込まれそうになるよ」
「……そう。みんな、不気味だと言ったり怖がったりするのに、奏は変ね」


 雨は珍しく顔を逸している。
 変だと言われれば確かに、私は変な子かもしれない。変じゃなければ、いじめられたりなんてしないだろうから。
 ふと雨は私の考えに気付いて失言だと思ったのか、すぐに顔をこっちへと向けてくれる。


「ごめんなさい。変なんて言ってしまって……」
「ううん、大丈夫。自覚はしてるから……って言ったら困るよね」


 笑いながら誤魔化すけど、別に雨からそう言われて傷ついたなんてことはなかった。
 しばしの沈黙。外から微かに雨音が聞こえるくらいの静寂が少しの間続く。


 数分経って雨がもう一度、語りかけてくれる。


「冬休み、お屋敷の方へと戻ろうと思うの」
「お屋敷? 実家みたいなもの?」
「実家……そうね。暮らしていた場所としてはそうかもしれない」
「よくわからないけど、お父さんとお母さんに顔を見せに?」
「……いいえ、両親は随分そこに帰っていないわ。よければ、奏も一緒に来てほしいのだけど」


 てっきり置いて行かれると思ってた。雨の両親のことも気になるけど、帰っていないということは健在だろうけど多忙な人たちなのかもしれない。


「でも、どうして私も一緒に?」
「そこでなら私も……私のことをちゃんと言えて、奏も私のことを知れると思うから」
「…………」